相談Q&A(内定取り消し、入社時期延期関係)

Q.今春から就職が決まっている新卒の内定者ですが、内定取り消し等が不安です。
A.新卒の採用内定者について、労働契約が成立したと認められる場合には、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない採用内定の取消は無効となります。もし、内定が取り消されそう、内定の取り消しの通知がなされたときは、承諾せず、学校やハローワークに相談しましょう。
また、新入社員が、労働契約の始期が到来した後に自宅待機等休業になった場合には、当該休業が使用者の責めに帰すべき事由によるものであれば、使用者は、労働基準法第26条により、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。

ポイント
【労働基準法第26条】
(休業手当)使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。 

Q.「新型コロナウイルスの影響で仕事がなく、新卒社を雇う余裕がなくなった」「感染拡大の防止」を理由に、内定取り消しを告げられた。
A.内定を受けた学生は労働者に準じる立場にあり、会社との労働契約が成立しています(始期付解約権留保付労働契約)。したがって、内定を取り消す際は、客観的に合理的と認められる社会通念上相当として是認できる場合のみに限られ、これを満たさない内定取り消しは、解雇権の濫用に当たります(労契法第16条)。通常、採用内定通知書には誓約書に内定が取り消される事由が記載されています。ただし、記載されていても、それが客観的に合理的な理由でなければならず、今般の新型コロナウイルス感染症の影響による経営悪化が内定取り消しの原因だとしても、使用者は採用内定の取り消しを防ぐために最大限努力をした結果でなければなりません(※解雇4要件を満たす必要があります)。単に、先行きが不透明、といったような理由での内定取り消しは認められません。また、使用者は、採用内定取消しの対象となった学生・生徒の就職先の確保について最大限の努力を行うとともに、学生・生徒からの補償等の要求には誠意を持って対応しなければなりません(新規学校卒業者の採用に関する指針・厚生労働省/2009年1月)
もし、内定の取り消しの通知がなされたときは、承諾せず、学校やハローワークに相談してください。

ポイント
※解雇4要件:「人員整理の必要性」、「解雇回避努力義務の履行」、「被解雇者選定の合理性」、「解雇手続きの妥当性」

Q.一方的に電話がかかってきて、内定取り消しを通告されて、10万円振り込まれた。
A.内定を受けた学生は労働者に準じる立場にありますので、会社が一方的に内定を取り消すことは認められず、内定を取り消すのであれば、前述の通り、正社員を解雇するのと同様の手続きを踏まなければなりません。まして、お金を振り込まれたことで内定取り消しが認められることはありません。このような対応を会社がしてきたときは、承諾せず、学校やハローワークに相談してください。
仮にその会社への復帰が難しい状況なった場合に、補償を求める場合についての補償額は、個別の交渉となりますが、会社の誠意ある対応を求める必要がありますし、会社はその求めに対し真摯に対応しなければなりません(新規学校卒業者の採用に関する指針・厚生労働省/2009年1月)。

Q.4月入社の予定だったが、仕事がないという理由で、入社時期の延期として7月入社を求められ、その間の賃金は支払われない、と会社から言われた。
A.内定取り消しではないものの、入社時期延期を求められた場合、それは明らかに会社都合による休業であり、会社側の負担で休業補償が払われなければなりません(労基法第26条)。会社は休業補償として、会社都合により休業をさせる4、5、6月の3か月分の平均賃金の60%を支払わなければなりません。もしそういったことを求められたら承諾せず、学校やハローワークに相談してください。

Q.内定を取り消され、これから就活しても新卒として扱われず、不利になってしまうのではないか。
A.2010年に、新卒者の定義は「卒業後3年以内」と政府が定めました。そのため、現在は卒業者であっても、新卒扱いになります。無理に転職採用にこだわらず、改めてじっくりと就職活動をすることも方法の一つです。

Q.「内々定」が取り消された。
A.法律的には、内定はあくまで正式に内定⼿続きを⾏った場合を意味し、その準備段階や前段階では雇⽤契約締結のための承諾⾏為は⾏われていないという考え⽅が⼀般的です。したがって、採⽤担当者から内々定を得たものの、正式内定は未了という段階では労働契約が成⽴しているとは考えにくいでしょう。そうなると、「内々定」の取消し通知は、労働契約そのものの解除ではないことになるので、解雇ではないことなり、この効⼒を争って雇⽤上の地位を主張するということは難しいかもしれません。しかし、内々定を得た労働者が⼀切保護されないということはなく、雇⽤契約締結への合理的期待が不当に侵害されたと認められる場合は、別途慰謝料請求等が可能となってくるでしょう。