なんでも労働相談Q&A
Q. 新たな勤務先(私立校)での就業が決まっているのですが、雇用の際の提出書類に【家族の学歴・勤務先及び地位】を記載する欄があります。保証人のサインも必要で、それは理解できるのですが学歴等まで提出する必要があるのかわかりません。そこまで家族の情報を開示したくないので、未記入で提出しても良いでしょうか。そもそもそのような情報を勤務校が求めることは問題ではないのかお聞きしたいです。採用面接の際にも「家族構成とその家族の職業を教えてください。」という質問もあり、違和感がありましたが、面接でしたので話せる範囲で伝えました。キリスト教の学校なので、家族の情報も必要なのでしょうか。
A. 採用面接時にも、家族の情報について質問されたとのこと、使用者が差別につながるような応募者の個人情報を収集することは、原則として認められていません。採用選考に当たり、「応募者の基本的人権を尊重すること」「応募者の適性・能力のみを基準として行うこと」が基本的な考え方として求められています。
求人・採用時に勤務先から家族の学歴など、応募者の適性・能力とは関係のない事項を確認されたことは、不適切であると考えます。採用後においては、原則収集する個人情報の目的・範囲を明示し、本人の同意があれば取得可能ですが、個人情報の収集の前提として「本人の同意」が必要です。キリスト教の学校であろうと、本人の確認なく、勤務先が家族の個人情報を得ようとすることは控えるべきだと考えます。
勤務先に家族の情報を求めることについて、その理由の説明を求められることをおすすめします。新たな採用先であり、申し出にくいお気持ちもお察しします。勤務先で問題が解決しない場合は、勤務地を管轄する労働基準監督署内の総合労働相談コーナーに相談してください。
Q. これまで知らない間に就業規則が変更されてきたが、今回初めて従業員代表が選出されました。しかし、その選出の仕方が会社主導だと推察されます。技能実習生に確認したところ「会社の○○に言われた」と言っています。また役員(部長:社長の弟)も従業員として加わっています。
A. 過半数代表者は民主的手続きで選出されることが必要です。過半数代表者は従業員全員に関わる重要な労使協定を締結するか、しないかについての判断をすることになり、総務部の課長、係長といった職務と代表の立場が両立できない人は代表者として選出すべきでない。(労基法施行規則第6条の2)と定められています。
選出方法は、投票(無記名・秘密投票)が原則ですが、挙手、起立、回覧などによる信任や、各職場代表者による互選も認められています。一方、使用者からの指名、親睦会の代表者や一定の役職者が自動的になる場合、一定の役職者の互選は違法となります。
過半数代表者の選出に問題があることについて、声を上げなければ会社の姿勢は変わりません。過半数組合があれば、労使協定の労働者側当事者になります。労働組合を立ち上げることをぜひ検討してください。
Q. 適応障害と診断され、当日欠勤が増えている状態です。2月はじめに診断書を会社へ提出したところ、月給の契約社員から日給のアルバイトへ契約変更する旨を伝えられました。会社は20日締めのため、前月の締め日まで遡って契約変更するとのことですが、新しい契約に関する書類をもらえていません。自分の契約が今どうなっているのか不安です。また、診断書提出の際に社長から「提出するな。自分で処分しろ。」と言われて対応が雑だったため、今後症状が悪化した場合、適切に対応してもらえるのか心配です。
A. 契約社員とのことですが有期契約の場合、雇用契約期間が満期になっていなければ、契約期間の途中でアルバイトへの変更は、本人の同意がない限りできません。新たな労働契約の条件や書類が無い中で同意する必要はありません。
雇用契約の終了日に次の雇用契約を締結するにあたり、会社側が契約社員としての雇用契約を拒む場合、アルバイトとしてでも働き続けたければ、次のアルバイトの雇用契約を結ぶことは可能です。「新しい契約に関する書類をもらえない」とありますが、新たな書類がもらえない中で、同意する必要はありません。
新たに雇用契約を結ぶ際には、必ず正式な労働条件通知書を要求してください。また、診断書を提出したところ、契約を変更すると言われたということも疑問がわくところです。更に毎月20日の締め日に合わせて、契約を前月の締め日まで遡って変更するという対応は、会社としてあるべき姿ではありません。まずは、勤務先の上司または総務や人事など労務を担当する部署と、しっかり話し合うことをお勧めします。もし勤務先の理解が得られず、現状の雇用契約が守られない場合、勤務先の所在地を管轄する労働基準監督署内の総合労働相談コーナーで相談することも検討してください。
Q. 現在BtoBで勤務しています。社内には私の入社後に設立された別のBtoCがあり、そちらの人手が足りなくなったとのことで、BtoBから交代制でBtoCでの勤務を命じられました。勤務時間や形態がこれまでと違い、了承はしていません。(BtoBはシフト休/8時~20時・BtoCは土日祝休/7時~21時)このような場合、了承せずとも会社都合で社員の勤務形態は勝手に変更が出来るのでしょうか?労働条件通知書は手元に残してあります。
A. 基本となるのは雇用契約書(労働条件通知書)の労働条件です。通知書には、①労働契約の期間に関する事項、②就業の場所および従事する業に関する事項、始業および終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに終業時転換に関する事項、③賃金の決定、計算および支払いの方法、賃金の締切および支払いの時期並びに昇給に関する事項、④退職に関する事項が明示されなければなりません。
これは会社側と相談者が合意した雇用条件であり守られなければならず、簡単に逸脱は出来ません。一時的に、応援で行く場合でも期間、労働時間の扱いなど、本人の了解は必要だと思います。
また、対企業業務と対個人顧客業務では応答時間が異なり、勤務時間が長くなっていると思われますが、その部分の賃金などは支払われているのでしょうか。一度、お近くの国の労働局の相談コーナーで考え方などお聞きになることをお勧めします。
Q. 3月31日に入社前研修があったのですが、研修部の方から、給料は4月1日分から支払われることになっているとの話がありました。入社前研修は参加が必須で、9時~18時(休憩1時間)の範囲で行われており、無給では労働基準法に違反しているのではないかと思い、相談しました。
A. 相談者の情報からすると、無給では問題ありと思われます。本来、入社前・雇用契約前に開催する研修会は、労働ではないので賃金を支払う必要はありません。
したがって「研修会受講は任意です。受講されなくても、入社に影響することはありません。この研修会には賃金を支払いません。」などと案内することが一般的です。また、会社が入社予定者に対して「入社前の研修を実施しますので、参加の場合には○○○円の日当を支払います」といった旨の申し込みを行い、入社予定者がそれに応じた場合、この個別の契約に基づいて、会社にはその約束の金額を支払う義務が生じます。
相談では、参加が必須とあります。よって、全員に強制されているこの研修は、労働時間と考えられます。就業規則や個別の契約に基づく支払い義務が無くとも、入社前の研修が労働基準法に定める「労働時間」に当たる場合、最低賃金以上を支払わなければなりません。
Q. 私の働いている認知症型グループホームは、利用者一人ひとりに担当職員が付きます。施設で必要な利用者の歯磨きや、歯ブラシ、マスクなどが無くなったら、担当職員が必ず購入しなくてはいけません。勤務時間外で立て替え購入し、後日事務員へ伝え精算してもらいます。昼間の勤務時間では買い物へ行く余裕もなく、休みの日やプライベートな時間に利用者の買い物をしている状況です。無給で休みの日買い物業務をしていると思っているのですが、どうなのでしょうか?
A. 労働基準法では「業務の指示を受けて行っている行為」はたとえ勤務時間外であっても「労働時間」とみなされる可能性があります。相談内容からすると「業務命令に基づく労働」と解釈できます。
「利用者の必需品を担当職員が責任を持って購入しなければならない」「通常の勤務時間中にそれを行う余裕がない」「買い物は休みの日やプライベートの時間に当たり前のように行われている」「購入したものは後日清算されている=業務として扱われている」という状態であれば、業務外の好意ではなく、正当な業務=労働と解釈できます。
立て替えや精算の実務が行われていることからしても、会社として必要な物品を相談者が代りに買っており「業務の一環」として買い物をしていると判断されます。よって、「買い物に行った時間」も労働時間とみなされ、労働の対価として賃金に反映されるものと推察されます。
まずは、施設側(経営側)と、同じようにお考えの同僚の方と一緒に、各担当者が勤務時間内での購入が出来る仕組み(例えば「週に1度、買い物の時間を確保する」などの提案)や、施設、組織としてまとめて購入する体制など業務時間内で対応できるよう検討することについて、話し合うことをお勧めします。改善が行われない場合には、好意の一環ではなく、業務=労働時間(時間外)として把握してもらうことを確認されることをおすすめします。