連合福島は、福島県の復興と再生に構成組織の連帯と力強い支援で取り組んでいます。風評被害を払拭し東日本大震災から一日も早い復興を目指そう!

2023年度運動方針 (補強)

 Ⅰ.はじめに

連合福島は第34回定期大会において、2022~2023年度の運動方針を確立し、第35回臨時大会では役員体制の一部変更と運動方針の補強を確認した。そして、構成組織・加盟組合、地域・地区連合は、その方針のもと職場・地域で力強く運動を進めてきた。

運動方針は、連合ビジョン「働くことを軸とする安心社会―まもる・つなぐ・創り出す―」を基本に、「①運動の領域と重点化、②組織体制・運営、③人財の確保と育成、④財政など、4つの改革パッケージによる運動領域の課題整理と重点化を図り取り組みを強化することといている。

福島県の独自課題として、東日本大震災、令和4年3月の福島県沖地震など度重なる重大自然災害からの復興・再生、若者の県外流出をはじめとした、労働人口の減少と社会構造の著しい変化、さらにコロナ禍で浮き彫りになった社会の脆弱性などについて、迅速かつ柔軟な対応を図ってきた。

Ⅱ.情勢認識と課題

1.社会情勢について

新型コロナウイルスの感染拡大は未だに終息を見せず、オミクロン変異株による感染の急拡大や、国際秩序の根幹を揺るがすロシアのウクライナ侵攻、自然災害の頻発化・激甚化による気候変動問題など、国内外の難局が同時にかつ複合的に押し寄せている。

国内においては、景気回復に向けた足取りが依然と脆弱な中で、資源の価格高騰による経済の圧迫や海外への資金流出、コロナ禍で更に進む人口減少・少子高齢化、潜在成長率の停滞など、感染抑止と経済回復の両立を模索しながら、SDGs(持続可能な開発目標)の推進やESG投資の拡大など、包摂的な成長への期待が高まっている。

また、一日も早い社会経済活動の正常化に向け、新型コロナウイルス感染症対応を客観的に評価し、次の感染症危機に備えて、迅速かつ適切に対応するための司令塔機能や、保険医療体制の確保など体制強化が求められている。

ポストコロナの経済社会に的確に対応するためには、人への投資、デジタル・グリーン政策を確実に推進しながら、「成長と分配の好循環」を拡大していく必要がある。

2.経済・雇用情勢について

足元の日本経済は、円安や資源高に直面しながらも、活動制限の緩和を受けた経済活動の活発化を背景に、持ち直しを見せている。

直近の経済情勢では、4~6月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は前年比の年率換算で2.2%増加し、3四半期連続のプラス成長となった。感染拡大の中で個人消費が増加した一方、中国・上海のロックダウンを受け自動車・家電を中心に生産や供給が滞り、交易条件として所得流出額を差し引いた国内総所得(GDI)の実質成長率は-1.2%であり、家計や企業の所得環境が一段と悪化している。

特に個人消費は、物価高の中でも活動制限が解除されたことにより、人手が増加するなど家計の経済活動が活発になり、耐久財の購入や旅行・外食などサービスへの支出が増加した。

また、公共投資は前期比+0.9%と6四半期ぶりに増加した。2021年春以降減少傾向にあった公共工事費は、2022年3月に底を打った以降、とりわけ土木工事が増加に寄与し、「防災・減災、国土強靭化のための加速化対策」が押し上げており、東日本大震災の復旧・復興工事は規模が縮小している。

雇用情勢については、完全失業率はコロナ前(2018~2019年)2.4%程度で推移していたが、コロナ感染拡大が顕著となった2020年以降、2.8~2.9%と悪化し直近の月次値(2022年6月)では2.6%に回復している。

 しかし、更に経済活動の正常化が進めば人手不足に直面する可能性が高い。日銀短観2022年6月調査の雇用人員判断D.I.(過剰-不足)は、-24ポイントと、コロナ流行直後(2020年6月)の-6ポイントと比較すると、人手不足感が着実に強まってきている。

 3.政治情勢について  

(1)岸田政権は、「『成長』と『分配』の好循環」「新自由主義からの転換」等を掲げるとともに、「聞く力」を標榜し指導力や経済活性化を期待させたものの、内実は自民党の力学のもとで、総理の主体性、リーダーとしての資質を問われている。予備費の積み増しに代表される恣意的かつ合理性を欠いた政策や未知数の事業が次々に決定された結果、犠牲は国民に押し付けられている。

   長期化するコロナ対策に加え、力による一方的な現状変更という国際情勢の悪化による物価高や、外交・安全保障への対応は喫緊の課題であるとともに、長引く経済の低迷と脆弱なセーフティーネット、少子高齢化・人口減少対策など、深刻な構造的課題に真剣に真正面から向き合ってこなかった、従来からの政治を漫然と続けてよいわけがない。与野党は、将来世代への責任を強く自覚しながら、中長期的な観点で持続可能な社会を作るため、本質的な議論を深めるべきである。

(2)第26回参議院選挙は、政権選択選挙ではなく中間選挙とも呼ばれるが、結果がその後の政権運営に影響を及ぼすケースもあり、言うまでもなく、連合は働く仲間のくらしと権利を守るために、真剣に汗を流す政治家を一人でも多く国政の場に送り込むことが、政治に緊張感をもたらすうえでも重要であることから、組織一丸となって取り組んできた。

 

第49回衆議院議員選挙での総括を踏まえ、今次参院選の基本方針では、「人物本位・候補者本位で臨み、各政党と政策協定は締結しない」ことを確認するとともに、「目的が大きく異なる政党や団体と連携・協力する候補者は推薦しない」とし、共産党とは与しない方針を確認した。

また、中央では立憲民主党と国民民主党の対立が焦点化されたこともあり、過去2回の参院選では、いわゆる野党共闘により、一人区において自民公認・公明推薦の与党候補と野党統一候補による「与野党対決型」の構図に持ち込む選挙区が多数を占めていたが、今回の参院選では野党候補の一本化が進まず、全32選挙区のうち事実上の与野党一騎打ちは11選挙区にとどまることとなった。

7月10日、第26回参議院議員選挙の投開票が行われ、自民党と公明党が非改選を含めて過半数となる76議席を獲得した。連合は、人物重視・候補者本位で臨み、比例代表9名、選挙区46名の候補者を推薦したが、当選はそれぞれ8名、14名にとどまり、福島県選挙区においても連合福島推薦候補者の当選を果たせず、政治の転換点とできなかったことは極めて残念である。

 4.福島県内の情勢について

(1)東日本大震災と原発事故から11年が経過した。県民の懸命な努力と国内外からの支援によって着実に復興が進んでいる。相双地区を中心に、帰還・移住等に向けた生活環境整備や、新たな産業基盤の構築を目指す開発実証拠点構築や関連産業の集積など、産業復興も進んできている。

しかし、いまだ2万4千人(令和4年5月現在)を超える県民が避難生活を続けている。更なる住民帰還や被災者の生活再建、原子力発電所の廃炉に向けた作業の着実な進展や、ALPS処理水の放出に伴う風評対策、農林水産業や観光業の再生・強化など、多くの課題が存在している。

近年、自然災害が多発・重大化し、福島県内においても幾度となく震度6級の地震が発生するとともに、風水害による重大自然災害も後を絶たず、防災・減災への備えや、ボランティアネットワークの構築が求められている。

(2)2年以上におよぶコロナ感染拡大によって県内経済は変動を繰り返しており、活動制限の緩和により持ち直しを見せたが、原材料・エネルギーの高騰が企業活動や消費の足枷になっている。直近の日銀短観(福島県分・6月調査)発表では、業況判断D.I.は製造業で-6ポイント、非製造業は-5ポイントとなっており昨年同月比(製造業-13、非製造業0ポイント)では、一部持ち直しの傾向がみられるが、製造業では輸送用機械、非製造業では卸売、小売、運輸・輸送がマイナスに転じている。

個人消費では、変異株に置き換わった新型コロナウイルス感染症は全国で急激な広がりを見せ、福島県内も「活動制限」は発出されないもの、今後の状況によっては下振れリスクに注意する必要がある。

(3)コロナ禍において、働くもののメンタルヘルスに深刻な影響がみられる。

2020年に実施した、連合福島と福島県立医科大学災害こころの医学講座の共同調査では、「何らかのうつ病、不安症が疑われる」が約5割と、全国平均と比較しても高い水準にあった。業種別・性別の傾向として、公務・公共や運輸・交通の女性において、メンタルヘルスがより悪化している傾向がみられた。

また、コロナ関連のストレス要因として、「感染不安」「日本経済の不安」「外出や社会交流の減少」などがあげられる。活動制限の解除により「外出や社会交流の減少」は改善してきているものの、コロナ禍における生活・働き方は刻々と変化していることから、引き続き心の安心・安全を確保する取り組みが求められる。

(4)福島県の推計人口(2022年7月現在)は、1,795千人で前年より21千人減少し、内訳として自然増減が-15千人、社会増減-6千人(転出が転入を上回る)である。一方、東京圏(千葉、埼玉、東京、神奈川)の人口は増加し、日本の総人口の約3割を占めることで一極集中がさらに拡大している。

厚労省「2020年賃金構造基本統計調査」、総務省「住民基本台帳人口移動報告」によると、賃金水準と転出者増減には相関関係が見られ、賃金の低いところから高いところへの移動(転出)が顕著になっている。地方での待遇や企業の働き方などを見直さない限り、これらの抜本的な対策にはつながらないとしている。

特に、福島県の最低賃金は低位(2021年現在828円)にあり、人口流出の一要因となっていることから更なる引き上げが求められる。

 5.この1年間における取り組みの検証

(1)「新型コロナウイルス感染症」の影響と対応

長期にわたる感染症拡大は社会や経済に大きな影響を与えている。連合福島は新型コロナ対策本部の設置後、定期的にアンケート調査や対話活動など通じ、それらが及ぼす影響と課題の変化を把握し、行政や使用者団体への要請行動を行ってきた。

具体的には、生活・雇用対策としては、職域における円滑なワクチン接種や接種時の休暇配慮などの条件整備や、コミュニケーション不足などに起因した健康被害の防止対策の充実、新型コロナウイルス感染症やインフレ要因による収益減を、賃金引き下げや人員減で解決しないこと、失業なき労働移動を目的とした在籍型出向など、行政(県・市町村・労働局)や経営者団体への要請を行った。

この中で、集団・職域接種の要請と合わせ、事情により接種できない人への差別・偏見(同調圧力)にも配慮が必要なことを付加した。

(2)2022春季生活闘争の取り組み

コロナ禍や国際情勢の影響による企業業績の悪化が懸念される中での賃金引き上げは、一定の評価ができるもの、格差(規模間、雇用形態間、男女間など)がいまだ存在する中、実態把握とその改善の具体的な取り組みの充実と強化が必要となる。

連合福島は、コロナ禍であっても新しい生活様式に基づき、感染予防の徹底と構成組織・加盟組合の協力を得て集会での意思統一を図りながら社会へのアピール、オルグ等を通じ、中長期的視点を持って「人への投資」と月例賃金にこだわり粘り強く交渉した結果、2022春闘においては、「けん引役」として一定の役割を果たすことができたと受け止める。

春闘妥結結果は、8年連続の賃金引き上げの流れを継続し、平均賃金上げ額は5,083円、引き上げ率は1.86%と昨年比で増加となった

(3)政策・制度実現の取り組み

連合福島は、県内で働く人すべての生活の安定・向上を目的として、政党や議員、首長との連携による政策・制度要求と実現に取り組んでいる。今年は第26回参議院議員選挙に取り組み、福島県選挙区は、連合福島を中心とする五者協議会(立憲民主党・国民民主党・社会民主党・県民連合・連合福島)を適時開催し、候補者擁立、支援の枠組みなど意思統一を図りながら取り組んだ。また、比例代表選挙区は、8構成組織が早くから組織内候補8名を推薦決定し、各構成組織・単組も創意工夫を凝らし取り組みを進めた。

   また、任期満了に伴う県内首長(市町村長)の選挙が行われた。2022年度、連合福島は、当該地域・地区連合との連携のもと、推薦・支持の決定を進めた。結果、福島市長選(推薦)、伊達市長選(推薦)、相馬市長選(推薦)、二本松市長選(支持)、西郷村長選(推薦)、新地町長選(推薦)のいずれの候補者も当選を果たすことができた。今後、任期満了を迎える市町村長選挙も、当該地域・地区連合との連携をより深め、推薦・支持の決定と支援の取り組みが必要となる。

(4)組織強化・拡大の取り組み

一昨年の第33回年次大会にて、連合福島組織拡大2030プランを提案し、2030年に組織人員9万人の目標を掲げた。組織センター委員会を通じ引き続き構成組織・地区連合との連携強化に取り組んできた。ただ、現状は企業の縮小・撤退などで人員削減に歯止めがかからず、8万人を割り込んでいる状況である。今後は構成組織・地区連合との連携により、未組織の関係会社・取引先企業等の組織化に重点に置き、多くの組織で集団的労使関係が構築できるよう推進する。

(5)最低賃金の取り組み

福島県最低賃金は30円の引き上げにより858円となった。昨年の中央最低賃金審議の目安金額を超え過去最高額となる目安金額31円( A・Bランク )30円( C・Ⅾランク )が提示され地方審議会に伝達された。

地方審議会では、使用者側から「福島は90%以上が中小企業であり、コロナ禍に加え、ロシアによるウクライナ侵攻の影響が及ぼす経済実態は大変厳しい状況であり、目安額は出すことができない」とし、労働側は「春闘の妥結結果に加えて、エネルギーの高騰、食品・生活用品の急激な高騰、家計への影響がより一層厳しくなっている」と主張し膠着状態が続いた。

最終的には公益側見解で採決となり、公益・労働側・使用者側の全会一致の賛成で結審した。春季生活闘争の結果と成果を「働く者全体の賃金引上げに波及させること」を目的としたこの取り組みは、労働側委員の強い主張と多くの署名(110,328筆)により引き上げが実現できた。

今後の課題として、県内で働く人が最低限の生活を送れる水準(リビングウエッジ:990円)への到達、そして地域による格差が存在しない全国一律1,000円以上の実現を求める。

 

PAGETOP
Copyright © 連合福島 All Rights Reserved.